高松高裁決H8・5・15は、この問題を正面から扱った数少ない判決です。要旨は以下の通りです。 ① 相続財産自体が破産者である。 ② 破産者の相続人は破産手続きの承継人ではない。 ③ したがって、免責申立てを認める余地はない。 ④ 破産者の相続人は、限定承認や相続放棄をすることにより、相続債権者が相続人の固有財産に対して権利行使するのを阻止すべきである。
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破産法は、破産者が破産手続開始の時点で有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない)を差し押さえる制度です(破産法34条1項)。言いかえれば、破産者が破産手続開始後に取得した財産(新得財産)は、破産手続開始の時点では有していなかったのですから、自由財産になります。 それじゃ、時間的に、この中間にある財産、つまり、破産手続開始の時点では有していなかったけれども、取得する原因が破産前にあった場合はどうなんだという問題が生じますが、これについては破産法34条2項は「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。」と規定しています。 つまり、破産手続開始後に取得した財産(新得財産)は、原則として自由財産だけど、生ずる原因が破産宣告前からあるときは自由財産にはなりません。破産宣告後の生じた財産が自由財産になるのは、取得原因も破産宣告後であることが必要になります。 これについて、面白い最高裁判決がありました。事案は、以下の通りです。 ① Aは、長男Bを被保険者とし、受取人をAとする生命保険契約を締結した。 ② Aは、破産した。 ③ Aが破産した後、長男Bが死亡した。 ④ Aは、生命保険金1000万円を受領した。 ⑤ 弁護士Cは、その1000万円は、新得財産だから破産財団に属しない、費消したっていいよ、とアドバイスした。 破産管財人から、AとAの弁護士Cに、賠償請求をした。 AとAの弁護士は、以下の通り主張した。 ① 生命保険金は、破産宣告前には生じておらず、破産宣告後に生じた新得財産である。 ② 契約は破産宣告前だが、その時点では、「Bは死んだらもらえる」という期待権にすぎず、「破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」とはいえない。 しかし、一審、二審は破産管財人の主張を認め、AとAの弁護士Cに、賠償を命じました。最高裁も、以下の通り、判断して、AとAの弁護士Cに、賠償を命じました。 ① 第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は,当該契約の成立により,当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保険金請求権を取得する。 ② この請求権は,被保険者の死亡前であっても,上記死亡保険金受取人において処分したり,その一般債権者において差押えをしたりすることが可能であると解され,一定の財産的価値を有することは否定できない。 つまり、 生命保険の受取人は、単に期待権を有しているのではなく、停止条件付の権利で財産価値があるんだ、差押も可能である。 したがって、「期待権」ではなく「請求権」である。 と判断しました。