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法人破産・代表者破産の弁護士費用合計は、一律50万円! 森法律事務所は企業の倒産・再生を得意とする法律事務所です。年間取扱企業整理件数は40社以上、国内トップレベルの取り扱い件数です。

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破産申請代理人の予納金確保義務と適正な弁護士報酬

森法律事務所は、年間40社以上の企業の清算・再生を扱う、企業の整理再生に関しては、国内有数の法律事務所です。いつでも、お電話・メールをください。
http://www.hasan-net.com/
03-3553-5955
弊所の特徴
① 法人破産代表者破産の弁護士費用合計一律50万円
②会社破産(個人破産は含まない)年間申立て件数40以上。国内トップレベル。
③ 35年の豊富な実績と弁護士16名のマンパワー
④破産会社代表者の破産後の生活確保に全力
⑤ 従業員の給与確保と取引先への配慮に尽力
電話の際は、必ず破産の相談ですと告げてください。専門部にまわします


現在、全国の裁判所は、破産申請手続きに、事実上、弁護士強制主義をとるとともに、破産申請代理人に諸々の法的義務を課している。
その中核となるのが破産申請代理人の財産散逸防止義務であり、その一環として、代理人による財産換価の禁止の原則がある。つまり、「破産申請代理人の責任で、破産申請者が浪費しないようコントロールし、きちんと資産を受け継いで管財人に引き渡しなさい、財産を換価するなんてどんでもない!」という義務である。破産申請代理人の迅速申立義務も、これと表裏をなす。

これらの義務の一つに、予納金確保義務がある。「破産事件を管財人に引き継ぐ以上は、管財人が管財活動をするのに必要な予納金を確保して、きちんと管財人に引き渡しなさい」という義務である。
現在、裁判所は、通常管財事件の予納金を最低20万円としているが、これは、最低でも20万円ということであり、20万円ならOKというわけではない。

実は、この義務は、破産申請代理人の弁護士費用と重要な関係がある。たとえば、破産申請会社に資産が120万円ある。このとき、破産申請代理人の弁護士が100万円の弁護士報酬を確保し、20万円だけ管財人に引き継ぐなら、この破産申請代理人の行為は、予納金確保義務に違反することになる。この弁護士報酬は否認されるリスクが高い。
逆に、引継ぎ予納金が1000万円あるならば、100万円の弁護士費用が否認されるリスクは少ないだろう。

現在、裁判所は、適性な弁護士費用がいくらかは、管財人費用とのバランスで考えている。よくホームページで、弁護士報酬を債権者数と負債額で決めているケースがあるが、このような報酬規程は、少なくとも、現在の裁判所の考えに違反する。重要なのは予納金とのバランスである。

弁護士報酬は業務量と会社資産の相関関係で決まるというのが、現在の裁判所の考えであるから
1、まず業務量が多く引継ぎ予納金も多額なときは、ある程度の弁護士報酬は認められる。しかし、この場合も、大企業の倒産事件でもない限り、上限は150万円程度で、200万円を超す弁護士報酬が認められるのは例外的だろう。
2、引継ぎ予納金が多いが、業務量がそれほどでもない場合は、弁護士報酬はできるだけ抑える必要がある。
3、引継ぎ予納金が少なく、しかし、申請代理人の弁護士業務量が多いときは、どうだろう?この場合は、採算割れしない限度で、弁護士報酬を抑えるしかない。100万円を超える弁護士報酬は否認されるリスクがある。

弁護士のホームページをみると、この予納金確保義務を完全に無視している記載が目につく。「弁護士費用は、100万円〜400万円程度」と、途方もない金額を示し、「1000万円の場合もあります」と堂々と公言している。
しかも、某ホームページでは「弁護士費用は安くはないが、会社は破産するから、 資産を残しておく意味はなく、それを破産手続費用にあてることに問題はない 」と断言している。これは、破産申請代理人の財産散逸防止義務や予納金確保義務を完全に無視しているというほかない。
なお、東京地裁は、この問題に関し、次のように述べている。
「(20万円の予納金しか確保せず、しかし、その一方で)申立代理人が法人の資産の中から高額の弁護士費用を受け取っている場合も散見され、予想される管財業務との見合いで(管財人費用と弁護士費用の)均衡を欠くこともあります。したがって、申立代理人において法人の自己破産の申立を準備するにあたっては、申立代理人の弁護士費用との見合いで、事案の難易や規模に応じた適切な引継ぎ予納金を確保することが求められています」(「破産管財の手引き」31頁)

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139万円の自由財産確保を目的とした直前の現金化は許されるか 

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個人が破産しても、99万円の現金と20万円の預金、20万円の保険金等は、管財人に引き継ぐ必要はなく、自己の自由な財産として、引き続き所持し続けることができます。現金と預金、保険で、ぴっちり自由財産の枠に当てはまっていれば、合計139万円を持ったまま破産できることになります。(東京地裁の基準、大阪や名古屋等では基準が異なります)

しかし、本来的自由財産である現金99万円は、いくらオーバーしても、たとえ1000万円あっても、99万円を自由財産として確保でき、99万円を超える金額、つまり、901万円を管財人に引き継げばいいのですが、本来的自由財産ではない預金や保険は、20万円の枠を1円でも超えたら全額自由財産性が否定されます。(東京地裁扱い)。

そこで、例えば、破産申立予定者AとBが、いずれも、
「①現金所持はほとんどなく、それぞれ②110万円の預金と③解約返戻(ヘンレイ)金29万円の保険を持っている」
ケースを考えてみましょう。

破産申立予定者Aは、このまま、自己破産しましたが、破産者Aは、自由財産の所持は全く認められません。預金も生命保険の解約返戻金も、20万円という枠をオーバーしているからです。

一方、破産申立予定者Bは、破産前日、①まず110万円のうち90万円を引き出して現金化し、次に、②保険の契約者貸付9万円借り受け解約返戻金を20万円にしました。破産宣告日時点では、破産者Bは、①現金99万円、②預金20万円、③解約返戻金が20万円の保険をもっていたことになり、Bは、139万円の自由財産を確保できます。

破産申立前日に資金移動しなかったAは、自由財産はゼロ、資金移動したBは自由財産139万円を確保したことになります

東京地裁はや主要な裁判所は、このような申立直前の現金化による自由財産を認めています。奇妙に思えるかもしれませんが、これは破産法上、理論的に導かれる結論です。

まず破産申立予定者といえども、破産宣告前は、自己の財産を自由に管理処分する権限があります。Bの資金の移動、現金化行為は合法的です。

次に、破産者の財産のうち、破産財団となる財産は、破産宣告時点で決まりますが、宣告時点では、Aは110万円の預金と解約返戻(ヘンレイ)金29万円の保険を持っているのに対し、Bは、現金99万円、預金20万円、解約返戻金が20万円の保険をもっています。Aは自由財産をすべて否定され、Bは139万円の自由財産を認められるのは当然です。

もっとも、破産法は、破産者の偏頗弁済等の行為を否認する権限を管財人に付与していますが、否認権行使の対象となる行為は、偏頗弁済、担保設定・対抗要件具備行為、債務者の財産を減少させる行為に限られています。債務者の資金移動行為は、偏頗弁済、担保設定・対抗要件具備行為に該当しないばかりか、債務者の財産を減少させる行為にも該当しません。
そうすると、債務者の申立直前の資金移動・現金化は、合法的な行為と考えられます。

ただ、一部の裁判所では、Bのような行為、つまり「危機時における現金化」は債権者を害するものであり、自由財産制度の潜脱だとして、それが弁護士費用等有用の途にあてられたものでない限りは、自由財産制度の潜脱あるいは乱用だとして認めない裁判所もあるようです

なお、生命保険の契約者貸付けは、保険会社が与信審査を行うことなく、申し出があれば、貸すことが義務付けられており、最高裁判例によれば、いわゆる金銭消費貸借契約ではなく、解約返戻金の前払いです。破産申立直前に契約者貸付をうけても、その事実を破産申請の際に申告しておけば、問題にはなりません。



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差押禁止財産  破産しても維持できる自由財産

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個人が破産しても、なお、自由に保有することができる財産―自由財産の範囲は、各地方裁判所によって取扱いが異なるが、東京地裁の取扱い例は
「法人破産の場合の会社代表者と家族の生活確保  Category:破産後の生活の確保   Date:2014年07月12日」で述べた通りである。
その記事の中で、簡単に「10、差押禁止財産」と記載したが、今日は、「それでは何が差押禁止財産なのか」を考えてみよう。

差押禁止動産は、民事執行法131条に規定があり、差押禁止債権は、民事執行法152条に規定があるほか、個々の特別法で差押が禁止されている場合がある。

【零細自営業者や労働者の商売道具のうち、その業務に欠くことができない器具
個人が小規模な自営業者の場合は、商売道具が差押禁止となり自由財産となる場合がある。
(1) 農業の場合は、農業に欠くことができない器具、肥料、次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子、農作業に使う家畜及びその飼料
(2) 漁業の場合は、漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
(3)技術者、職人、労務者その他知的又は肉体的な労働で生活している場合は、「その業務に欠くことができない器具」その他の物(商品を除く。)
農業従事者や漁業従事者の場合は、自由財産の範囲は、何となくわかるが、労働者の場合は、自由財産になるのは、「その業務に欠くことができない器具」という非常に曖昧な表現でくくっているだけに、いまいち不明である。

【簡易生命保険の還付金請求権】
保険契約者が個人の場合で平成3年4月1日以前に発効した契約は差押禁止であり、自由財産となる。
平成3年4月1日以後に発効した契約、契約者配当金、平成3年4月1日以前に発効した契約でも、契約者が法人の場合、差押禁止ではないので、自由財産とならず、破産財団を構成する。

慰謝料請求権】
1、 行使上の一身専属権だから差押禁止であり、自由財産になる。
2、 ただし、具体的な金額の慰謝料請求権が当事者で客観的に確定し、現実の履行を残すのみとなった場合は、一身専属性を失い、自由財産にはならない。

【企業年金】
企業年金のうち、確定給付企業年金、確定拠出年金は、差押禁止であり、自由財産になる。

【公的年金】
国民年金 厚生年金も、差押禁止財産であり、自由財産になる。

【退職金]
小規模企業共済は、事業者の退職金制度として差押え禁止債権とされています(小規模企業共済法15条)
中小企業退職金共済・建設業退職金共済は、従業員の退職金制度であり、同様、差押え禁止債権です(中小企業退職金共済法20)

【その他】
生活保護や福祉、扶養を目的とした給付請求権や各種災害補償手当の受給権も、差押禁止財産であり、自由財産になる。


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会社法改正と会社分割その1

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借金を踏み倒したまま、会社だけが生き延びる企業再生の手法として、会社分割が利用されるに至って久しい。今や、「企業再生=怪しげな再生専門家集団=企業分割」という図式ができあがっている。
資金繰りに窮した会社が、別の新会社を設立し、そこに【会社の重要な資産】と【大切な債権者】だけを移し、あとは踏み倒するというもので、一般的には、今後の事業に必要な債権者の債権だけは返済し、金融機関の債権や公租公課は踏み倒すという手法で利用されている。

【ケース】
たとえば、A社は資産4000万円、負債は1億6000万円。
負債の内訳は、銀行に4000万円、財団債権あるいは優先債権となる公租公課が4000万円、永年の恩顧のある取引先Bに4000万円、やたらと口うるさい取引先C社に4000万円。
A社にとって、B社は、今後の事業展開に必要な仕入れ先であるし、B社にとっても、このC社の4000万円の支払いがなければ連鎖倒産は必須である。一方、C社は、大企業で倒産の恐れはないし、何かと好戦的で、今後は付き合いたくない。
こういう場合、破産をすると、法律的には、まず公租公課に優先的に支払い、運よく残りがあれば銀行とB、C社で債権額に応じて案分比例で配当を受けることになる。
しかし、A社の代表者は、人情として、連鎖倒産必須のB社を何とか助けたいし、今後の自分の事業や生活のことを考えると、B社には、できるだけの配慮はしたい。
一方、銀行や公租公課など、これによって、誰かが生活に窮するというわけではなく、踏み倒しても、倒産するものではない。C社は、もともと付き合いを断りたいと思っていた会社だ。
憤っているA社代表者に、再生の専門家という人物が近付き、悪魔のようにささやく。「社長、うまい方法があります。私にお任せなさい」
A社社長は、再生の専門家という人物のアドバイス通りに、A社を分割し、D社という会社を新設し、そこに4000万円の資産とB社の負債4000万円だけを移す。分割会社A社には、新設会社D社の株が交付される。その結果、D社はA社の100%子会社になるが、国も銀行もC社も、D社に移った資産4000万円には手を出せなくなる。一方、A社社長は、D社の社長になり、B社にきちんと債務を支払いつつ、B社と取引を継続する。
A社のもらった株は、4000万円の負債と4000万円の資産のある会社だから、株価評価はゼロだ。A社は極めて安価で会社のオーナー一族に株を売却することもできる。そもそも中小企業の株など差し押さえても意味がない。

【旧商法】
こういう企業分割は、旧商法では否定されていた。それは、企業分割をするには分割会社と新設会社・承継会社の双方において、会社分割後に「債務の履行の見込みがあること」が会社分割の有効要件だと解されていたからである。
しかし、これだと会社分割が委縮し、とくに事業再生にはほとんど利用されないことになる。そこで、会社法では、思い切って「分割会社に従前どおり債務を請求できる場合は、債権者には何の通知もいらない」としたのだ。譲渡の対価として、その対価に見合う新設会社の株が交付されるから債権者保護には何の問題もないと考えたのである。

【最高裁判決】
しかし、このような詐害的会社分割は最高裁によって詐害行為取消の対象になると判断された。このことは、以前のブログで述べている。
「会社分割は詐害行為になる。ついに出た!最高裁判決。Category:企業再生 Date:2012年10月19日」(最高裁 平成24年10月12日判決)
しかし、この方法は、債権者にとって、かなりの負担となる。
債権者は、まず詐害行為取消訴訟を提起し、判決を得て新設会社から財産を旧会社に戻すことになる。しかし、これは、移動した「モノ」を旧会社に差押可能な状態に戻したにすぎない。ここから、通常の訴訟のように、旧会社に対する貸金返還請求訴訟を提起し、その判決を得て、戻した財産を差し押さえることになる。要する費用も時間もばかにならない。中小の債権者は、二の足を踏むだろう。

そこで、改正会社法は、詐害的会社分割について立法的解決を図ることになった(その2へ続く)

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会社法改正と会社分割その2

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会社法改正と会社分割その1からお読みください
【改正会社法】
そこで、会社法が改正され、今度は、いきなり新設会社に請求できることになった。
① 請求できる債権者は、新設会社に承継されない債務の債権者、つまり分割会社に従来通り請求できる債権者である。上記の例でいえば、金融機関や債権者Cである。
② この場合、残存債権者、つまり金融機関や債権者Cは,新設会社D社に対して,A社の債務の履行を請求することができる。
③ ただし、その企業分割が、債権者を害する詐害的会社分割である場合に限られる。
④ 詐害的会社分割でも、吸収分割承継株式会社D社が吸収分割の効力を生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは,この限りでない。
⑤ 請求できる範囲はA社から承継した財産の価額を限度とする。

今後は、詐害的企業分割が施行された場合は、債権者は、詐害行為取消権を行使するか、新設会社に請求するか、いずれかの権利を行使できることになる。
両者の違いは、詐害行為取消権は、新設会社に移動した「モノ」を「裁判」で「旧会社に取り戻す」ことだが、新会社法の場合は、「債務の履行」を「新会社に請求する」ことである。
簡便さからして、会社法の新設規定が利用されるケースが圧倒的に多くなるのではないか。

【会社分割の詐害性の判断基準】
今後の争点は、どういう場合が「債権者を害する」と言えるかどうかである。
改正法は、それについては何も規定していない。
実は、この点は、非常に難しい問題を含んでいる。

「詐害性」を緩やかに解釈すると債権者平等が実現されることになる。しかし、このような解釈は、事業再生に企業分割が利用されなくなるリスクがある。
逆に「詐害性」を厳格に解釈すると、事業再生には、積極的に企業分割が利用されるが、反面、詐害的な企業分割の横行を許すことになる。
詐害性の解釈は、この二つの相反する要請をどのように調整するかという判断でもある。
これに関する議論は、まだ十分尽くされていない。
主に事業再生を主たる業務分野とする業界からは、できるだけ詐害性を狭く解釈し、中には、骨抜きにするつもりなのではないかとしか考えられないような意見さえでている。
一方、事業再生よりは、公平な倒産制度を実現しようという立場からは、できるだけ詐害性を広く解し、中には、債務超過になる企業分割は全て詐害性があるとして、事実上、旧商法時代にもどそうとする意見もある。

参考になるのは、最判H24・10・12の須藤正彦裁判官による補足意見である。事案は、3300万円の不動産がある会社が新設会社に、その3300万円の不動産を移し、また3,200万円の負債も移したという事案である。この結果、
1、 新設会社は3,300万円の資産と3,200万円の負債の会社となった。
2、 分割会社の資産は、100万円の価値のある新設会社の株だけになった。

企業会計上は、分割会社には、新設会社の株が交付されているから、資産と負債のバランスシートには何の変化もない。企業会計的には、相当な対価が支払われている。
須藤裁判官は、これに対し、分割会社の債権者と新設会社の債権者の弁済率が異なったことが問題だと指摘し、次のように述べている。
① 本件新設分割における対価が(企業会計的には)相当であるとしても
② 本件残存債権の責任財産は、大幅に変動するなどの事態が生じ
③ 本件残存債権者と本件承継債権者との間で著しい不平等が生ずるに至った
④ だから詐害性がある。

つまり、会社の資産を処分した場合の弁済率が、承継会社の債権者と分割会社の間で著しく異なるか否か、これが詐害性の判断基準となることになる。

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