忍者ブログ
法人破産・代表者破産の弁護士費用合計は、一律50万円! 森法律事務所は企業の倒産・再生を得意とする法律事務所です。年間取扱企業整理件数は40社以上、国内トップレベルの取り扱い件数です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

集合債権譲渡担保その3  最判平成16年7月16日と街金業者

森法律事務所は、年間40社以上の企業の清算・再生を扱う、企業の整理再生に関しては、国内有数の法律事務所です。いつでも、お電話・メールをください。
http://www.hasan-net.com/
03-3553-5955
弊所の特徴
① 法人破産代表者破産の弁護士費用合計一律50万円
②会社破産(個人破産は含まない)年間申立て件数40以上。国内トップレベル。
③ 35年の豊富な実績と弁護士16名のマンパワー
④破産会社代表者の破産後の生活確保に全力
⑤ 従業員の給与確保と取引先への配慮に尽力
電話の際は、必ず破産の相談ですと告げてください。専門部にまわします


「集合債権譲渡担保その1・その2」から、お読みください。
前回のブログでは、債権譲渡登記をしていることを前提として述べましたが、今回は、その債権譲渡登記がされていない場合です。

債権を譲渡担保に取る場合、対抗力を持つためには、債権譲渡登記や通知をしなければならないのですが、これは、同時に担保設定者が「アブナイ」ということを知らせることにもなり、担保設定者は、多くの場合、通知等に抵抗します。
そこで、実務的には、担保設定時には通知等をせず、いよいよアブナクなってから、通知等をだすことになります。

ところが、その担保設定会社が破産すると、そういう通知は、「危機時における対抗要件具備行為」として、管財人から否認されます。破産法164条1項は,支払停止後の対抗要件具備行為であって,原因行為から15日を経過してなされたものは,受益者が支払停止等について悪意であれば否認できることを規定しており、通常は、15日経過しているからです。

そこで、これを避けようとして、担保設定時は、単なる担保設定の予約だとか、支払い停止等を条件として、債権譲渡担保が効力を生ずるという、かなり無視筋は法律構成を工夫しました。これだと破産法164条1項をクリアできます。

しかし、かなり無理筋な工夫で、最高裁は、こういう条件型債権譲渡担保や予約型債権譲渡担保は、否認対象になるとしました。(最高裁判所平成16年7月16日判決)。
「債務者の支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約は,その契約締結行為自体は危機時期前に行われるものてあるが、
契約当事者は,その契約に基つく債権譲渡の効力の発生を債務者の支払停止等の危機時期の到来にかからしめ,これを停止条件とすることにより,
危機時期に至るまで債務者の責任財産に属していた債権を
債務者の危機時期が到来するや直ちに当該債権者に帰属させる
ことによって,これを責任財産から逸出させることをあらかしめ意図し,これを目的として,当該契約を締結しているものてある。
 上記契約の内容,その目的等にかんかみると,上記契約は,破産法72条2号の規定の趣旨に反し,その実効性を失わせるものであって,
その契約内容を実質的にみれば
上記契約に係る債権譲渡は,債務者に支払停止等の危機時期か到来した後に行われた債権譲渡と同視すべきものてあり,上記規定に基つく否認権行使の対象となる」

この判決は、債権譲渡担保契約についてのものですが、その趣旨は、街金業者にも適用できます。
高利貸が事業者に融資する際に、白紙の債権譲渡通知を多数取得しておいて、手形不渡等が発生した場合に債権譲渡通知書の内容を補充して発送する、というようなことが行われることがあります。
しかし、上記の最高裁の判例からすれば、債務者が破産手続をとった場合には、本件のように否認されることになります。
意外なところで、街金業者対策が可能になったわけです。
(注)
会社破産の制度一般については、弊所代表弁護士森公任・副代表弁護士森元みのりの「倒産法の全て」148~189頁で、一般の方向けに簡潔かつ簡易に記載してあります。より全体的な情報が必要な方は、下記の本を購読されるか事務所に相談にきてください。
 http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4054

是非 ご購読ください。(大学でテキストとして利用されています。また楽天ブックス・ベストセラーの一冊になっています。)
「図解で早わかり 倒産法のしくみ」

森公任 森元みのり 共同監修
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4054
倒産法のしくみ[森公任]
定価: 1,890円(本体:1,800円+税)
「法的整理から私的整理まで、様々な倒産制度のしくみや実務上のポイントがわかる。
また、解散・清算、M&Aの知識まで倒産関連の知識を集約。
さらに、法人破産以外の個人民事再生や個人破産についてもフォローした一冊! 」

カラー版 一番よくわかる 離婚の準備・手続き・生活設計
共同著編者 森 公任・森元 みのり
2015年07月 発売
http://www.seitosha.co.jp/2_3950.html

販売価格 1,404円
離婚に悩むあなたの「知りたい」に応える決定版!!
「離婚という難題に直面している方の一歩を踏み出す道しるべになる本書は、離婚が認められる理由から、離婚までの準備、お金や子供についての考え方、離婚に関わるさまざまな手続きまで、離婚前後のあらゆるステージを網羅し、図解&イラストでわかりやすく解説しています! 」

「図解 相続・贈与・財産管理の法律と税金がわかる事典」
森 公任・森元 みのり 共同監修
2015年05月 発売
定価: 1,944円(本体:1,800円+税)
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4172
「人の死と同時に必ず発生する相続。相続が発生した場合の相続分、遺言、遺産分割、登記、裁判所での調停などの手続き、相続税知識まで幅広くフォローしています。また相続が発生する前から準備をしておきたい事項について、贈与税の知識や生前契約、成年後見、信託などの財産管理契約のしくみについても解説しています。
相続登記申請書、遺言状、契約書、家事調停手続きなどの書式サンプルも豊富に掲載しています。平成27年度の税制改正にも対応した安心の1冊です!」
PR

集合債権譲渡担保その2 破産手続との関係(債権譲渡登記がある場合)

森法律事務所は、年間40社以上の企業の清算・再生を扱う、企業の整理再生に関しては、国内有数の法律事務所です。いつでも、お電話・メールをください。
http://www.hasan-net.com/
03-3553-5955
弊所の特徴
① 法人破産代表者破産の弁護士費用合計一律50万円
②会社破産(個人破産は含まない)年間申立て件数40以上。国内トップレベル。
③ 35年の豊富な実績と弁護士16名のマンパワー
④破産会社代表者の破産後の生活確保に全力
⑤ 従業員の給与確保と取引先への配慮に尽力
電話の際は、必ず破産の相談ですと告げてください。専門部にまわします


「集合債権譲渡担保その1」から、お読みください。
以下では、債権譲渡登記がされていることを前提として、述べています。

【第一段階 期限の利益喪失前】
1月1日
アナタは、会社経営が苦しく弁護士と相談して破産することを決意した。
1月7日
売掛金を回収し、他の預金とともに、全額それを弁護士に送金した。受任通知は、まだこの時点ではだしていない。
←この段階では、期限の利益を喪失していないので、破産申立予定会社は、取立権限があります。破産者は、おカネを回収して、予納金や弁護士費用に充当できます。

【第二段階 期限の利益喪失後 譲渡通知前】
1月8日
代理人弁護士は破産する旨の受任通知を出した。ただし、集合債権譲渡担保者は、まだ、特例法4条2項の債権譲渡の通知をしていない。
←(1)この段階では、受任通知がだされたので期限の利益を喪失し、債務者は取立権限を失うので、破産予定者(破産宣告後は管財人)は、債権を回収できません。
(2)しかし、集合債権譲渡担保者は、通知前なので、自己が売掛金の取立権限があることを売掛金支払い義務者に主張できません。
(3)その結果、
①売掛金支払義務者は、集合債権譲渡担保者に支払っても、破産予定者(破産宣告後は管財人)に支払ってもかまわない。
②売掛金支払義務者が、破産予定者(破産宣告後は管財人)に支払ったときは、集合債権譲渡担保者は、自己に返金するよう管財人に請求でき、この請求権は財団債権となる。

【第3段階 期限の利益喪失後 通知後】
1月9日 集合債権譲渡担保権者が特例法4条2項の売掛金譲渡通知を債務者に送付した。
←この段階で、集合債権譲渡担保者は、自己が取立権限があることを破産予定者(破産宣告後は管財人)ばかりか、売掛金支払義務者にも主張できます
売掛金支払義務者が破産予定者(破産宣告後は管財人)にも支払ったときは、集合債権譲渡担保者に二重弁済をすることになります。売掛金支払義務者は、破産管財人に返金を求めることになりますが、この権利は財団債権になります。(「集合債権譲渡担保その3  最判平成16年7月16日と街金業者」へ続く)



是非 ご購読ください。(大学でテキストとして利用されています。また楽天ブックス・ベストセラーの一冊になっています。)
「図解で早わかり 倒産法のしくみ」

森公任 森元みのり 共同監修
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4054
倒産法のしくみ[森公任]
定価: 1,890円(本体:1,800円+税)
「法的整理から私的整理まで、様々な倒産制度のしくみや実務上のポイントがわかる。
また、解散・清算、M&Aの知識まで倒産関連の知識を集約。
さらに、法人破産以外の個人民事再生や個人破産についてもフォローした一冊! 」

カラー版 一番よくわかる 離婚の準備・手続き・生活設計
共同著編者 森 公任・森元 みのり
2015年07月 発売
http://www.seitosha.co.jp/2_3950.html

販売価格 1,404円
離婚に悩むあなたの「知りたい」に応える決定版!!
「離婚という難題に直面している方の一歩を踏み出す道しるべになる本書は、離婚が認められる理由から、離婚までの準備、お金や子供についての考え方、離婚に関わるさまざまな手続きまで、離婚前後のあらゆるステージを網羅し、図解&イラストでわかりやすく解説しています! 」

「図解 相続・贈与・財産管理の法律と税金がわかる事典」
森 公任・森元 みのり 共同監修
2015年05月 発売
定価: 1,944円(本体:1,800円+税)
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4172
「人の死と同時に必ず発生する相続。相続が発生した場合の相続分、遺言、遺産分割、登記、裁判所での調停などの手続き、相続税知識まで幅広くフォローしています。また相続が発生する前から準備をしておきたい事項について、贈与税の知識や生前契約、成年後見、信託などの財産管理契約のしくみについても解説しています。
相続登記申請書、遺言状、契約書、家事調停手続きなどの書式サンプルも豊富に掲載しています。平成27年度の税制改正にも対応した安心の1冊です!」

集合債権譲渡担保その1 集合債権譲渡担保登記

森法律事務所は、年間40社以上の企業の清算・再生を扱う、企業の整理再生に関しては、国内有数の法律事務所です。いつでも、お電話・メールをください。
http://www.hasan-net.com/
03-3553-5955
弊所の特徴
① 法人破産代表者破産の弁護士費用合計一律50万円
②会社破産(個人破産は含まない)年間申立て件数40以上。国内トップレベル。
③ 35年の豊富な実績と弁護士16名のマンパワー
④破産会社代表者の破産後の生活確保に全力
⑤ 従業員の給与確保と取引先への配慮に尽力
電話の際は、必ず破産の相談ですと告げてください。専門部にまわします


一般にはあまりなじみのない言葉ですが、倒産実務では、この集合債権譲渡担保が問題になることが多いです。
要するに債権者が債務者会社に融資に際し「あんたんとこの売掛金、全部まとめて担保にいれてもらうよ」という担保です。
担保というのは、本来、債務者会社の不動産なんかが普通ですが、まあ、こういうものは、たいてい、銀行なんかが担保に取っている。担保余力はない。こういうとき、そんなら、売掛金を担保にとって融資することが金融実務では、結構、行われています。
対象は、担保設定者が「事業を継続する過程で将来発生する」売掛金債権等で、これを担保の目的で債権者に譲渡します。

ただ、譲渡したといっても、担保目的なので、担保設定者は、対象債権を普通の債権と同じように、取り立てたり、受領できたりします。債権者に譲渡したのに、なんで債務者は回収できるんだ?と疑問に思う人もいるでしょうが、まあ、法律家の世界で、これを疑問に思う人はいません。

それじゃあ、担保をとった意味がないじゃないかと思われるかもしれませんが、支払いを怠ったりして、期限の利益喪失をしたりすると、つまり、融資金をまとめて支払うことになってしまうと、担保設定者は取立権限を失い、担保設定者が回収できることになります。仮に担保設定者が回収しても、担保権者に返金しなければなりません。

この集合債権譲渡担保は、登記することで対抗要件を具備しますが、この債権譲渡登記は平成10年10月の債権譲渡特例法により始まったものです。
民法の原則では、金銭債権を譲渡したことを第三者に主張するには,確定日付のある証書によって債務者へ通知するか 債務者の承諾を得なければなりません。
しかし、民法の原則に対する特例として、会社などの法人がする金銭債権の譲渡などについては,その内容を債権譲渡登記所に登記することにより,債務者以外の第三者に自己の権利を主張することができます。
債権譲渡担保はそれ以前から資金繰りや保全の手段として存在していましたが、この法律により法的な第三者対抗要件が具備され、一般に普及しました。
近年は金融庁がABL(動産・売掛金担保融資)を積極的に推進していることもあり、債権譲渡登記と合わせて資金繰り円滑化の一手段として利用が広がっています。

ただし、金融実務では、「債権譲渡担保の会社=資金繰りが苦しい会社」というイメージがあり、債権譲渡登記をしている会社は、「あぶない」というイメージが、あります。債権譲渡担保そのものが、担保が尽きた会社が、最後に設定する手段に用いられることが多いからです。
実務上も、破産申請を検討する会社は、この債権譲渡担保を設定しているケースに結構遭遇します。
このため施行当初は商業登記に直接登記されていたものが、現在は情報開示が制限され、譲渡人の本店管轄法務局にて「現在事項証明書(債権譲渡登記事項概要ファイル)」と指定して申請して、譲渡の確認をすることになります。(東京都中野区にある東京法務局民事行政部債権登録課が窓口となっています。ただし、情報といっても、債権譲渡登記がない場合は「記録されていない」旨、登記がある場合は「譲受人の名前」くらいの情報しか入手できません。)

それでも、集合債権譲渡担保を設定するということは、債権者側からすると、その会社は、財務的にかなり問題があると取引先は推測してしまいます。取引先の信用調査には、この債権譲渡時の有無の確認が必須とされています。自分も、新規の取引先と取引を開始する場合は、この債権譲渡の登記を確認するようアドバイスしています。
そのため、債務者が債権譲渡登記を嫌がり、登記をしない場合も、あります。

「集合債権譲渡担保その2破産手続との関係(債権譲渡登記がある場合)」へ続く


是非 ご購読ください。(大学でテキストとして利用されています。また楽天ブックス・ベストセラーの一冊になっています。)
「図解で早わかり 倒産法のしくみ」

森公任 森元みのり 共同監修
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4054
倒産法のしくみ[森公任]
定価: 1,890円(本体:1,800円+税)
「法的整理から私的整理まで、様々な倒産制度のしくみや実務上のポイントがわかる。
また、解散・清算、M&Aの知識まで倒産関連の知識を集約。
さらに、法人破産以外の個人民事再生や個人破産についてもフォローした一冊! 」

カラー版 一番よくわかる 離婚の準備・手続き・生活設計
共同著編者 森 公任・森元 みのり
2015年07月 発売
http://www.seitosha.co.jp/2_3950.html

販売価格 1,404円
離婚に悩むあなたの「知りたい」に応える決定版!!
「離婚という難題に直面している方の一歩を踏み出す道しるべになる本書は、離婚が認められる理由から、離婚までの準備、お金や子供についての考え方、離婚に関わるさまざまな手続きまで、離婚前後のあらゆるステージを網羅し、図解&イラストでわかりやすく解説しています! 」

「図解 相続・贈与・財産管理の法律と税金がわかる事典」
森 公任・森元 みのり 共同監修
2015年05月 発売
定価: 1,944円(本体:1,800円+税)
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4172
「人の死と同時に必ず発生する相続。相続が発生した場合の相続分、遺言、遺産分割、登記、裁判所での調停などの手続き、相続税知識まで幅広くフォローしています。また相続が発生する前から準備をしておきたい事項について、贈与税の知識や生前契約、成年後見、信託などの財産管理契約のしくみについても解説しています。
相続登記申請書、遺言状、契約書、家事調停手続きなどの書式サンプルも豊富に掲載しています。平成27年度の税制改正にも対応した安心の1冊です!」

絶対に否認されない事業譲渡で再生する

森法律事務所は、年間40社以上の企業の清算・再生を扱う、企業の整理再生に関しては、国内有数の法律事務所です。いつでも、お電話・メールをください。
http://www.hasan-net.com/
03-3553-5955
弊所の特徴
① 法人破産代表者破産の弁護士費用合計一律50万円
②会社破産(個人破産は含まない)年間申立て件数40以上。国内トップレベル。
③ 35年の豊富な実績と弁護士16名のマンパワー
④破産会社代表者の破産後の生活確保に全力
⑤ 従業員の給与確保と取引先への配慮に尽力
電話の際は、必ず破産の相談ですと告げてください。専門部にまわします


会社を破産させると法人は解散し、負債と共に全てが消滅します。全てが消えるんで借金もゼロになる、そこで、ゼロから再スタートできる、というのが、破産法の考えです。
しかし、「ゼロからスタートできます」といっても、高齢だとか、家族がいると、「だから何?」と言いたくなる経営者は多いでしょう。高齢者あるいは家族を抱えていると、全てがゼロになることは、けっこう、きついものがあります。

しかし、注意すべきは、破産で失うのは、売ることができる物的財産だけということです。不動産とか知的財産権、そういう換価可能なものは、全て売り払われ、ゼロになりますが、それ以外は、何の影響もありません。アナタの人脈、専門技術、経験、顧客や取引先からの信頼、そういうものは、破産で失うことはありません。言いかえれば、これらを利用すれば、否認されることのない事実上の事業譲渡ができます。

例えば、アナタが会社を破産させるに際し、アナタの従業員が独立して、従来の会社の顧客を引き継いでも、それは、何の問題もありません。その従業員は、自分が築いた人脈を利用しているからです。管財人から否認されることは、ありません。
しかし、その従業員が、従来の契約とか売掛金なんかを引き継ぐと、いわゆる「事業譲渡」になり、破産管財人が否認します。

[最近の事例1]
最近の経験から言うと、A社は、永年、乳製品材料を仕入れて業者販売していたところ、破産の前に、A社代表者の従業員である長男が友人の会社B社の取締役になり、A社の仕入れ先から乳製品を仕入れ、A社の得意先に販売するようになった。それとは別に、A社は、自己破産したというケースがあります。
これなんか、何の問題もありません。A社の長男が、A社で築いた人脈を生かしてA社と同じ仕入先から購入し、A社と同じ得意先に販売しても、それは、当然の話です。代表者の長男だから、築いた人脈や築いた得意先との信頼関係を生かした仕事をしてはならない、という法律はありません。あったら、個人の人格を否定するもので、憲法違反になります。
同様に、従業員をA社からB社に引き抜いても、何の問題もありません。従業員に、同業他社に移籍するなとは言えないからです。
しかし、これを超えて、A社の車とかA社の売掛金とか、こういう「モノ」までB社に移したら、それは「事業譲渡」になり、否認の対象になります。
ちなみに、このケースでは、その長男が、最終的に代表者になっています。

[最近の事例2]
もうひとつ、最近の事例からいうと、IT関連の業務を行っていたC会社の破産。システム開発を主たる業務とする会社ですが、やはり、破産前に、複数の従業員が退職し、別会社Dを設立。複数の従業員は、得意先との強い個人的な信頼関係があり、得意先も、その従業員と継続的に取引をすることにしたというケースです。
この場合、従業員が、C社時代に築いた得意先との強い信頼関係や人脈、ノウハウをD社で生かしたとしても、破産法上、何の問題もありません。
しかし、これを超えて、C社の車とかC社の売掛金とか、こういう「モノ」までD社に移したら、それは「事業譲渡」になり、否認の対象になります。

こういう事実上の譲渡のなかには、同じ事務所で、堂々と営業を続けている会社もあります。この場合、管財人から、事務所の賃貸借契約や机、パソコンなど一式の買取りを申し入れれば、大体、買取りに応じてくれます。事務所を明け渡したり、備品を処分すれば、財団債権の負担になるからです。

要するに、物を移そうとすると事業譲渡になり管財人から否認の対象になりますが、モノ以外のものを新会社に移すことは、何の問題もありません。移さなかった「もの」も、破産管財人から安価で買い取ることができる場合もあります。

会社代表者のみなさん、これを利用して、結構、しぶとく生き抜いている場合があります。
ただし、この方法は、従来の得意先や仕入れ先と、強い信頼関係を築いている場合で、しかも、主にサービスとか技術を売り物にしている業種に限られます。




是非 ご購読ください。(大学でテキストとして利用されています。また楽天ブックス・ベストセラーの一冊になっています。)
「図解で早わかり 倒産法のしくみ」

森公任 森元みのり 共同監修
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4054
倒産法のしくみ[森公任]
定価: 1,890円(本体:1,800円+税)
「法的整理から私的整理まで、様々な倒産制度のしくみや実務上のポイントがわかる。
また、解散・清算、M&Aの知識まで倒産関連の知識を集約。
さらに、法人破産以外の個人民事再生や個人破産についてもフォローした一冊! 」

カラー版 一番よくわかる 離婚の準備・手続き・生活設計
共同著編者 森 公任・森元 みのり
2015年07月 発売
http://www.seitosha.co.jp/2_3950.html

販売価格 1,404円
離婚に悩むあなたの「知りたい」に応える決定版!!
「離婚という難題に直面している方の一歩を踏み出す道しるべになる本書は、離婚が認められる理由から、離婚までの準備、お金や子供についての考え方、離婚に関わるさまざまな手続きまで、離婚前後のあらゆるステージを網羅し、図解&イラストでわかりやすく解説しています! 」

「図解 相続・贈与・財産管理の法律と税金がわかる事典」
森 公任・森元 みのり 共同監修
2015年05月 発売
定価: 1,944円(本体:1,800円+税)
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4172
「人の死と同時に必ず発生する相続。相続が発生した場合の相続分、遺言、遺産分割、登記、裁判所での調停などの手続き、相続税知識まで幅広くフォローしています。また相続が発生する前から準備をしておきたい事項について、贈与税の知識や生前契約、成年後見、信託などの財産管理契約のしくみについても解説しています。
相続登記申請書、遺言状、契約書、家事調停手続きなどの書式サンプルも豊富に掲載しています。平成27年度の税制改正にも対応した安心の1冊です!」

危機時における財産分与は否認されるか

森法律事務所は、年間40社以上の企業の清算・再生を扱う、企業の整理再生に関しては、国内有数の法律事務所です。いつでも、お電話・メールをください。
http://www.hasan-net.com/
03-3553-5955
弊所の特徴
① 法人破産代表者破産の弁護士費用合計一律50万円
②会社破産(個人破産は含まない)年間申立て件数40以上。国内トップレベル。
③ 35年の豊富な実績と弁護士16名のマンパワー
④破産会社代表者の破産後の生活確保に全力
⑤ 従業員の給与確保と取引先への配慮に尽力
電話の際は、必ず破産の相談ですと告げてください。専門部にまわします


〈原則〉
個人的な実務上の経験から言えば、会社代表者の自己破産をするときなど、妻に対する財産分与が結構問題になる。
例えば、夫Aは、会社経営に失敗し、個人的にも多額な負債を抱えている。しかし、幸いなことに、家にはローンはついていない。そこで、妻Bは、夫Aと離婚したのち、破産宣告前に、財産分与を原因として家の2分の1を移転登記した。その後、Aは、自己破産申請し、破産宣告を受けた。こういう場合、管財人は、否認権を行使して、元妻Bから移転持ち分2分の1を取り戻せるだろうか?
裁判所の考えは、それが通常の財産分与なら問題ない、つまり
① 民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり
② 財産分与に仮託してされた財産分与であると認めるに足りるような特段の事情がない限り、
問題にはならないという立場である。この判決(最判58・12・19)は、詐害行為の判決であるが、否認訴訟にも同様に考えられる。

〈負債が多いのに、なぜ財産分与が認められるのか?〉
普通、財産分与は、資産と負債を比較し、資産が多いときのみ、その多い分の価値を分与するものである。普通、破産する際は、夫は莫大な借金を背負っているから、そもそも財産分与などありえないという考えも成り立つ。しかし、その負債に配偶者が関与していないときは、財産分与の計算からは、その負債を除外する。専業主婦の妻が、事業に失敗した夫から、家の権利を半分取得しても、問題はないだろう。ただ、夫婦共同経営で、その負債に妻が積極的に関わっていたとき、その負債が資産形成と関連性があるときは、財産分与請求を認めるべきかは、難しい判断だ。

〈財産分与を原因として移転登記をすることは、対抗要件具備行為として管財人から否認されないか〉
これは、相当価格の場合の財産分与が否認されないのは、
① 本来は、否認の対象になるが、相当価格だから否認されないだけだと考えるか
② 相当価格の財産分与は、もともと否認の対象にならないと考えるか
の違いによる。
「危機時における財産分与は、本来は、否認対象だが、相当価格の場合は否認できないだけだ」と考えると、危機時における対抗要件具備は否認されることになる。しかし、「財産分与は、本来は、否認対象にならず、ただ財産分与に名を借りた不相当価格での行為だけが否認の対象になる」と考えると、危機時に配偶者が財産分与を原因として移転登記をしても、否認されることはない。
財産分与は、取引行為ではなく、本来的には否認対象にすべきでないことを考えると、対抗要件具備行為にはならないと考えるべきだが、東京地裁破産再生部の考えは不明である。

〈破産宣告後の財産分与〉
清算的財産分与は、破産宣告前に行使し、具体的な権利にしておく必要がある。財産分与は、財産分割制度ではなく、価値の配分にすぎないからである。したがって、財産分与義務者が破産して管理処分権を喪失したら、もはや財産分与は請求できない。
また、具体的な権利になっていても、例えば、単なる金銭給付請求権のときは、破産債権として処理されてしまう。財団債権になることはない。

〈偽装離婚〉
しばしば問題になるのが、離婚して財産分与をもらいながら、その後も、夫婦仲良く暮らしている場合である。というか、普通は、このケースが多い。債権者からすると、偽装離婚ではないか、ということであるが、夫婦仲が良くても、離婚の法律効果を享受する意思がある以上は、偽装離婚とは言えない。(大阪高裁判例)。

是非 ご購読ください。(大学でテキストとして利用されています。また楽天ブックス・ベストセラーの一冊になっています。)
「図解で早わかり 倒産法のしくみ」

森公任 森元みのり 共同監修
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4054
倒産法のしくみ[森公任]
定価: 1,890円(本体:1,800円+税)
「法的整理から私的整理まで、様々な倒産制度のしくみや実務上のポイントがわかる。
また、解散・清算、M&Aの知識まで倒産関連の知識を集約。
さらに、法人破産以外の個人民事再生や個人破産についてもフォローした一冊! 」

カラー版 一番よくわかる 離婚の準備・手続き・生活設計
共同著編者 森 公任・森元 みのり
2015年07月 発売
http://www.seitosha.co.jp/2_3950.html

販売価格 1,404円
離婚に悩むあなたの「知りたい」に応える決定版!!
「離婚という難題に直面している方の一歩を踏み出す道しるべになる本書は、離婚が認められる理由から、離婚までの準備、お金や子供についての考え方、離婚に関わるさまざまな手続きまで、離婚前後のあらゆるステージを網羅し、図解&イラストでわかりやすく解説しています! 」

「図解 相続・贈与・財産管理の法律と税金がわかる事典」
森 公任・森元 みのり 共同監修
2015年05月 発売
定価: 1,944円(本体:1,800円+税)
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4172
「人の死と同時に必ず発生する相続。相続が発生した場合の相続分、遺言、遺産分割、登記、裁判所での調停などの手続き、相続税知識まで幅広くフォローしています。また相続が発生する前から準備をしておきたい事項について、贈与税の知識や生前契約、成年後見、信託などの財産管理契約のしくみについても解説しています。
相続登記申請書、遺言状、契約書、家事調停手続きなどの書式サンプルも豊富に掲載しています。平成27年度の税制改正にも対応した安心の1冊です!」