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会社の破産を申し立てる際、一番気になるのは予納金の額だが、その予納金の額を左右するのが原状回復である。
数年前に企業を閉鎖し、会社の実態は何もない、会社のあった場所は、いまはもう別の会社が入っている。こういうときは、破産申立も非常に楽だし、破産管財人もやることがあまりない。
しかし、こういう仕事は、あまりない。たいていは、来週支払い不能になる、従業員の給料も支払えない、切羽詰まった状態で駆け込んでくる、というケースだ。もう少し早く相談にきてくれたらと思うのだが、たいていの代表者は、ぎりぎりまで頑張って、ほぼ100%資金ショートとわかってから、弁護士のところに駆け込んでくるというケースが多い。
こういう案件で、一番問題になるのが原状回復費用である。ITビジネス系なら事務所に机・パソコンがあるだけで、原状回復費用はそんなにかからない。しかし、これが倉庫に在庫商品が大量にある問屋とか工場となると、原状回復費用が気になる。
破産申立代理人からすると、「問屋なら在庫商品を売り捌いて在庫をゼロにして大家に明け渡し、工場なら売却してしまって、原状を回復し、そののち、破産申し手をして管財人に引き継げばいい」と思うが、そうはいかない。
例の破産申立代理人の財産確保義務・迅速申立義務があるからである。裁判所の基本的な考えは、「破産申し立て代理人は、絶対に換価してはならない、換価するのは管財人だ。迅速に管財人に引き継げ」というスタンスである。
会社の財産に手をつけてはならない、となると、原状回復をしてから管財人に引き渡すことはできない。会社の財産は、できるだけ引き継ぎ、「原状回復は管財人さん、お願いします」となる。
しかし、そうなると、それに見合う予納金を用意しなければならなくなる。見合う予納金が用意できないとなると、破産申立ができなくなる。
この予納金の額は、東京地裁あたりだと、柔軟に対処してくれる。しかし、地方の裁判所になると、厳密に原状回復費用を算出し、そこに管財人の費用を加算して、高額な予納金を要求し、その予納金が用意できないとなると、破産申し立てを受け付けないというのが日常的な光景である。破産申し立て代理人には、予納金確保義務があるからである。
そうなると破産申立代理人としては財産確保義務から換価行為が禁止され、予納金確保義務から予納金を用意しなければならない。しかも、迅速申立義務があるから、うかうかしていられない。
結局、「そんなこと、できるわけないだろう!」となる。
ま、そのあとは、整理屋さんが、「私にお任せ下さい。弁護士や裁判所なんか、何のあてにもなりません」となるが、破産申立代理人に、換価するな、しかし原状回復の予納金を確保しろ、なんて言われたら、喜ぶのは整理屋さんだけでしょうな。
追記
千葉の女性弁護士さんが、2016年7月、県内の女性の破産を裁判所に申し立てた際、元夫から受け取った100万円を報告しなかったことを理由として業務停止一か月受けています。99万円の現金は自由財産ですから、なんで申告しなかったんでしょうか?
ただ、その弁護士さんが、隠した100万円を依頼者と山分けしたわけではなく、ただ、その女性に同情しただけですから、これで「一か月」というのは、ちょっと重いなぁという気がします。
懲戒処分はやむを得ないとしても、せいぜい「戒告」でしょう。破産申立代理人の誠実義務を、やたら強調する一部の考えにひっぱられたんでしょうか?