倒産手続きの中で三角相殺を認めなかった最高裁判決 債権者との対応 2017年04月16日 森法律事務所は、年間40社以上の企業の清算・再生を扱う、企業の整理再生に関しては、国内有数の法律事務所です。いつでも、お電話・メールをください。http://www.hasan-net.com/03-3553-5955弊所の特徴① 法人破産代表者破産の弁護士費用合計一律50万円②会社破産(個人破産は含まない)年間申立て件数40社以上。国内トップレベル。③ 35年の豊富な実績と弁護士16名のマンパワー④破産会社代表者の破産後の生活確保に全力⑤ 従業員の給与確保と取引先への配慮に尽力電話の際は、必ず破産の相談ですと告げてください。専門部にまわします.三角相殺って言葉、あまり聞いたことはありませんが、企業間の取引では結構使用されているそうです。普通、相殺というのは、二者間で行われます。「あんたのところへの借金とうちへの借金をチャラにしよう」というのが相殺だからです。しかし、現在の会社は、実は、グループ企業として活動しています。債権管理も、グループ全体として管理していることが普通です。そこで、多くの場合、会社間で合意して相殺がグループ単位で行うことが実務上それなりにあるようです。例えば、Aグループに属するAⅠ社からB社が原材料を購入した。B社は、これを製品化してAグループに属するAⅡ社に販売した。この場合、いちいち、代金の受け渡しをする意味はなく、AⅠ社・AⅡ社とB社の三者間であらかじめ相殺を合意しておき、相殺します。これが三角相殺です。しかし、AⅡ社が破産したとき、B社は三者間の合意に基づいて三角相殺ができるでしょうか?破産法 第67条 第1項は、破産債権者は,破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは,破産手続によらないで,相殺をすることができる。と規定しています。また民事再生法92条1項も、再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第九十四条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、再生債権者は、当該債権届出期間内に限り、再生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。債務が期限付であるときも、同様とする。と規定しています。もし、この「相殺」のなかに、グループ企業間の合意による三角相殺も含まれているとすれば、AⅡ社が破産したとき、B社は三者間の合意に基づいて三角相殺ができることになります。企業が細かく法人化される一方、法人単位で動くことなく、グループ全体で活動し、リスク管理もグループ全体で行っているという現実を重視するかどうかという問題ですが、民事再生法92条1項について、最高裁の判断がありました。リーマン・. ブラザーズ証券株式会社対野村信託銀行株式会社の事件で、東京高裁と東京地裁は、三角相殺について民事再生法92条1項の適用を認めたのに対し、最高裁は、三角相殺は、倒産手続きの中では認められないと判断しました。東京高裁平成26年1月29日判決要旨は、以下の通りです。1、本件相殺条項のような三者間の相殺を定めた契約は、分社化が進んだ金融機関のデリバティブ取引における慣行といえる程度に広く用いられていたと推認される。 ↓2、(こういう慣行が存在する以上は)再生手続開始の時点において再生債権者が再生債務者に対して債務を負担している場合と同様の相殺の合理的期待が存在する。危機時期に相殺を目的として濫用的に締結されたものとはいえない ↓3、(こういう慣行が存在する以上は)分社化した企業グループ同士が一括決済をするような行為は、他の者においても十分想定できる(はずで、これを認めても不公平とは言えない)これに対し、最高裁は、最高裁平成 28 年 7 月 8 日第二小法廷判決は、以下の通り判断しました。1、民事再生法92条1項は「再生債務者に対して債務を負担する」ことを要件としている。2、(三角相殺を認めることは)互いに債務を負担する関係にない者の間における相殺を許すものにほかならず、民事再生法92条1項の文言に反し、再生債権者間の公平、平等な扱いという基本原則を没却する。なお、裁判官千葉勝美の補足意見が付されています。「密接な組織的関係ないし協力的な営業実態等が存在する姉妹会社であるような場合」は、この三角相殺を認める余地があるというものですが、「密接な組織的関係ないし協力的な営業実態」というのが具体的にどのようなケースが理解できません。この補足意見、どう解すればいいのでしょうか?(注)おかげさまで、このブログは、平日は一日で100人前後の訪問者がいます。総アクセス数は、一日で150件前後です。ただ、このブログは、主に専門家が実務の参考にすることを前提としたレベルで記載しています。会社破産の制度一般について知りたい方は、弊所代表弁護士森公任・副代表弁護士森元みのりの「倒産法の全て」148~189頁で、一般の方向けに簡潔かつ簡易に記載してあります。初歩的で全体的な情報が必要な方は、下記の本を是非 ご購読ください「図解で早わかり 倒産法のしくみ」森公任 森元みのり 共同監修http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=4054定価: 1,890円(本体:1,800円+税) 「法的整理から私的整理まで、様々な倒産制度のしくみや実務上のポイントがわかる。また、解散・清算、M&Aの知識まで倒産関連の知識を集約。さらに、法人破産以外の個人民事再生や個人破産についてもフォローした一冊! 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